もぐもぐコラム

観光の原点回帰

私の実家は、松本市で88年の歴史を持つ旅館「明神館」。そんな関係もあり、当然のように観光業界に身を置いてまいりました。ところで、この『観光』という言葉、その語源は『観国之光』という中国の古典に出てくる一文にあるそうです。 「他の国へ行き、その地の良い点(光)を見(観)て学ぶ」がその意味するところで、他所の地のありのままの人や文化に触れることこそが本来の『観光』でした。

ところが、高度成長期以降、『観光』は本来の意味を離れ、誰かの意図によって生み出された観光地を訪れ、お土産を買って帰ることになってしまいました。

ただ、私は近年、そんな流れが変わりつつあるように感じています。「その土地のありのままに触れる」という言わば「観光の原点回帰」が本格的に始まりつつある今、私は観光事業に携わる者として、より強く信州の魅力を発信していきたいと考えています。

そんな取組みの一つとして、2019年は『古民家農泊事業』を始めます。これは農村地域ならではの伝統的な生活を体験し、地元の人たちとの交流を楽しみながらその土地の風土や文化、自然がもたらす魅力を観光客の方に味わっていただく農村滞在旅行です。例えば、古民家など古くても清潔感ある施設に宿泊していただき、その土地の四季を感じていただく。食事は地元の食材を地元の方に伝統的な方法で調理してもらい、一汁五菜程度の料理を召し上がっていただく。そういったその土地に根ざした新しい観光体験を提供したいと思っています。

築100余年を数える古民家

敷地内では農業体験もできる

私たちの住む信州にはたくさんの宝物があります。得てして中にいると当たり前に感じてその魅力に気づかないものにこそ、そんな宝は隠れているもの。例えば、信州の豊かな自然に育まれた長野県産の野菜や果物、畜産物そして発酵食品といった食材の素晴らしさは、これから更に世界的に有名になっていくことでしょう。 そのためのお手伝いをすることができたなら、それは私にとって幸せであり、私を育ててくれた信州への恩返しになると考えています。


齊藤 忠政
おいしい信州ふーど公使
齊藤 忠政さん
株式会社明神館 代表取締役
シックスセンス株式会社 代表取締役
「ルレ・エ・シャトー」日本・韓国支部長
地産地消を目指した旅館運営に取り組み、新しい旅館のあり方を提案