もぐもぐコラム

信州の山里の暮らしで健康食を

信州佐久の山里に、いま春もまた巡り来て、凍って溶けたあぜの枯れ草の中から、フキノトウを摘んで楽しんでいたら、枯れ草のあぜは次々と、ノカンゾウ、ヨモギ、ナズナ、カキドウシ…と、小さき草花がもえ出て、たちまちに5月となり、山々は白緑に木々が芽吹き輝いている。

50年ほど前に求めた農民の詩人、真壁仁氏の額に「峠に立つとき 過ぎ来し道はなつかしく 展けくる道は たのしい」と、書かれている。

思えば平成の初め、40歳余りで役所を退職し、料理の修行をし、佐久の山里で「職人館」を開館し、30年近くなり、令和元年の今年、70歳になる。

開館当初から春になると作り続けている料理の一品は「フキノトウの甘辛みそ」だ。作り方は、いたって簡単だ。

▲ふきのとうの甘辛みそ

 

フキノトウを細かく刻み、純米酒・黒糖・信州みそ・わずかな唐辛子をフライパンに入れて、火にかけて練るだけで出来上がる。

この「フキノトウの甘辛みそ」を目当てに来館してくれ、冷酒の肴にし、食事の最後はご飯にこの甘辛みそを乗せて、湯づけ飯で満足してくれていた、ありがたい客人の何人かも、土にかえっていった。

それにもう一品は、「信濃の山野の彩りサラダ」だ。

▲信濃の山野の彩りサラダ

 

畑に、冬菜や野沢菜の花がたちあがり、冬越しの根菜(ニンジン・紅心大根・青大根…)、山野に恵まれる山菜など、手元にある食材を刻んで、ドレッシング(菜種油・塩・しょうゆ・純米酢)であえるだけだ。

「信州の大地」という料理人が、田畑や山野に恵まれる食材を、すでに滋味深く料理してくれてある。地の利を活かし、健康に良い料理を作り続けたい。


北沢 正和
おいしい信州ふーど公使
北沢 正和さん
株式会社しなの文化研究所 手打ちそば・山里の彩り料理「職人館」(佐久市)館主
第1回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」シルバー賞受賞