もぐもぐコラム

vol.2 北沢公使 信州の風土を皿に移して ー 春野の野遊び料理 ー 

信州の山野に草木萌える春が巡り来ると、「春野のエノキ木立ちの野遊びサラダ」を作る。信州とご縁がある「井上井(せい)月(げつ)」の俳句と、北原白秋「落葉松(からまつ)」の詩をイメージしたサラダだ。

 

▲春野のエノキ木立ちの野遊びサラダ

 

春の野や酢みそに あはぬ草の無(なし)

(信州伊那井月俳句大会実行委員から)

 

かつて、信州伊那地方を中心に放浪し詠んだ「井上井月」の俳句だ。

信州の凍(い)て解けの大地から、枯草の中に次々と芽生える、ヤブカンゾウ、カキドウシ、タンポポ、アサツキ・・・。昨秋、畑に残し冬越しさせた野沢菜、冬菜。室で貯蔵した支那大根、紅(こう)心(しん)大根、ジャガイモ・・・。これら手元にある食材を 彩り、味、香りなどを楽しめるように何種類も合わせて、信州みその酢みそで和えて食べ、井月の俳句を実感する。

 

▲ヤブカンゾウとウドの酢みそ

 

 

からまつの林を過ぎて

からまつをしみじみと見き

・・・・・・・・・

世の中よ あはれなりけり

常なけどうれしかりけり

山川に山がはの音

からまつにからまつのかぜ

 

北原白秋が1921年、軽井沢に滞在中に作られた「落葉松」の詩の一部だ。

山里の雑木が白緑に、落葉松の梢が黄緑色に萌えだし林立する姿をイメージして、信州のエノキダケを束のままフライパンで蒸し焼きにする。

 

作り方は、酢みそを一面に塗りつけた大皿の上に、蒸し焼きした束のエノキをのせ、その周囲に酢みそで和えたサラダをたっぷりと盛る。春野での野遊び心で、刻々と変化してしまう風土の、どの一瞬をとどめて、皿に移し料理するかを最も感じる山里の春だ。

人の世は災害など次々と起こるが、山野は何もなかったかのように、今春も草木萌え、元気づけてくれる。

 

▲カキドウシの野生ハーブティー

 

※このコラムは5/10(日)信濃毎日新聞朝刊 「おいしい信州ふーど」キャンペーン広告内に掲載されたものです。


北沢 正和
おいしい信州ふーど公使
北沢 正和さん
株式会社しなの文化研究所 手打ちそば・山里の彩り料理「職人館」(佐久市)館主
第1回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」シルバー賞受賞